本州最西端に位置する山口県は約40のゴルフ場を有し、名門と呼び声高いゴルフ場も多く存在します。中でも1991年、2002年の2度にわたり日本オープンの舞台となった下関カントリー倶楽部は巧みなコース設計もさることながら、紺青の海を臨む景観に魅了される行視ともに見事なゴルフ場です。県内最長の運営を誇る新山口カントリー倶楽部の生い立ちなど、ラウンド以外にも興味を惹かれてしまうようなちょっとした小ネタもお伝えしながら、山口県が誇る名門クラブを紹介いたします。今回取り上げた10ヶ所それぞれの特色をお読みいただいて、次回のラウンドの参考にしてください。

山口にある名門といわれるゴルフ場

歴史的人物ゆかりのゴルフ場「新山口カンツリー俱楽部」

新山口カンツリー俱楽部は1957年(昭和27年)に開場した山口県最古のゴルフ場です。
西日本最大の戦国大名となった毛利元就の後継は、明治維新の活躍もあり多大な財を得ましたが、戦後の財閥解体の影響から邸宅などの維持が難しくなり、本邸の裏山の敷地をゴルフ場にして、賃貸料を救済の資金源とするところから生まれたコースです。当初造られた9ホールは日本の第一人者と呼ばれる設計家井上誠一氏が44歳の時に手掛け、重機を使わず人の力で作られたそうです。その後、昭和50年の18ホール増設の際にレイアウト変更など行われましたが、自然の地形が生かされた起伏の多いフェアウェイやグリーンが遮られたティーショットなどコントロール重視のハイレベルな戦略性は不変です。会員の他ビジターも利用可能で、曜日やプランによっては5,000円以下とコストパフォーマンスも優れています。歴史上の有名人物の所縁ある建物と共に60年ほどの時を過ごしてきた木々や芝が名門たる情緒を醸し出しています。クラブハウスを後に歩みを進める顔からは、勇ましい気持ちを滲ませることでしょう。

日本史に残る場所を舞台とした名門ゴルフ場「下関ゴルフ倶楽部」

下関ゴルフ倶楽部は1956年(昭和31年)に開場したシーサイドゴルフ場です。鎌倉時代中期の元寇の舞台となり、1、2番ホール左側の林には当時の遺跡を垣間見ることができます。下関の水産業に数々の業績を残した中部利三郎氏が息子の体のためと3ホール有する川棚温泉ゴルフ場の拡大を模索した際、相談した設計士の上田治氏が昔「無呂の港」と呼ばれた阿倍仲麻呂等遣唐使所縁の八ケ浜を推奨。反対運動の中、由緒ある松原を残したコースが造られます。スタートから海風の影響を避けるため並植の青松を超えない低い弾道が必要となり、飛距離を奪う湿気が手強さを感じるでしょう。砲台上となる硬く締まったバミューダグリーンは転がりが早く、いつも通りのアプローチを困惑させ、周囲のアリソンバンカーと相まって非常にタフなプレーが要求されます。1991年に行われた日本オープンでは中島常幸が、2002年にはデビッド・スメイルが難攻のレイアウトを克服し優勝を果たしています。本コースではビジターの方は会員同伴にてラウンドできます。日本のゴルフ界に名を馳せる名門コースを楽しむ機会をぜひとも得てください。

地元復興に尽力する思いが成した名門ゴルフ場「宇部72カントリークラブ阿知須コース」

宇部72カントリークラブ阿知須コースは1960年(昭和35年)に開場した4コースの中で最も長い歴史を有しています。山口県宇部市の主要産業であった炭鉱会社を起源とする宇部興産株式会社の当時の社長、中安閑一氏により、宇部市の経済発展と地元住民の楽しめるスポーツの場として構想し造られます。自ら踏査し100枚以上の設計図を書き上げ、名称上田治氏の意見を拝し「植物体系を可能な限り自然のままに残す」ことをテーマとして設計されたコースは、雄大なフェアウェイと自然林のセパレートで成され、時の風格を醸し出しています。400ヤード以上のホールと8番、9番の池絡みにタフなショットが求められるOUTに、570ヤードのロングと400ヤード越え左ドッグレッグに小さいベントグリーンの13番が待つINがゴルファーの心理に挑みを掛けます。平日なら食事つき乗用カート2サム保証で8,000円ほど。土日祝日でも日にち限定ながら10,000円以下となるお得なプランが用意されています。日本産業界を代表する企業の理念と熱い気持ちが込められたフィールドで、最高のショットをお楽しみください。

国内最後の社団法人が叶えたゴルフ場「周南カントリー倶楽部」

周南カントリー倶楽部は、1966年(昭和41年)に開場した緩やかな丘陵地に広がる名門ゴルフ場です。ナベツルの越冬地として有名な熊毛の地でゴルフを愛する有志らの尽力により日本最後の社団法人組織として誕生します。手がけたコース数が12と中国地方最多となる人気設計家、福井八十八氏の監修により高低差20mの適度なアンジュレーションにたっぷりの距離、特にアウトは直線的なレイアウトが多いのでダイナミックなショットが楽しめます。INはドッグレッグに谷越え、池越えを取り入れたバラエティ溢れるホールに上級者は夢中となるでしょう。強烈に左へと折れた16番や、緩やかな右カーブの落としどころを狭める池の待つ17番などは名物ホールと謳われています。2017年には45歳以上の女子プロゴルファーを対象としたLPGAレジェンズツアーが開催され、大竹エリカプロが栄冠を手にしています。ビジターの方は会員紹介を必要としますが、コース管理やキャディーさんをはじめとするスタッフの対応を体験すると納得します。俗世を隔てた50年強の緑の世界で新しいゴルフライフを見つけてください。

山口を代表する宇部興産自慢の名門ゴルフ場「宇部 72 カントリークラブ万年池東コース」

宇部 72 カントリークラブ万年池東コースは、1967年(昭和42年)に阿知須コースに次いで開場した宇部72カントリークラブの旗艦ゴルフ場です。元首相岸氏の始球式から絶え間なく続く筋書きの無いドラマは、ウッドを握る多くの出演者に最高の舞台を提供しています。空を写す広大な25ヘクタールの水面を有す万年池を贅沢に取り入れたレイアウトは、独特なウォーターハザードとともに木々の緑とがマッチングして、素晴らしい景観を見せてくれます。丘陵地特有の傾斜とアンジュレーションにベントの砲台グリーンにスコアメイクの難しさと面白さを味わえるでしょう。特に12番のショートは湖に浮かぶ小島の様に佇むグリーンを狙う名物ホールとして多く知られています。1976年に第5回ペプシウィルソントーナメントが開かれP・トムソンプロが優勝。1998年の日本シニアでは5連覇のかかった青木功プロを制してグラハム・マーシュプロが優勝しています。料金は平日が時間指定のセルフで12,000円弱、15,000円弱のプランがあり、食事は含まれていませんが、トーナメントコースのプレー費としてはリーズナブルでしょう。日本屈指の水の名門コースに挑戦して下さい。

時代の逆風を克服した瀬戸のゴルフ場「朝陽カントリークラブ」

朝陽カントリークラブは、1966年(昭和41年)に開場した松の囲む風情漂う名門ゴルフ場です。芸術性を重視するコース作りを理念とした赤星六郎氏の後継者とされる間野貞吉氏が設計し、競技する喜びを数々のゴルファーに与え続けています。まだ富裕層の楽しむスポーツと言われていた時代であり、今では信じられませんが、オープン当初はセカンドショットもティーアップしていたそうです。緩やかなスロープで結ばれた丘陵コースは瀬戸内の気候に育てられた自然が溢れていて、フェアウェイが最も狭く、正確なティーショットを要するOUTの4番に、上空を流れる風を読み池越えする5番。グリーン手前に松がそびえ立つINの12番は湖を取り囲むようにレイアウトされ、白鷺の群れが心を和ませてくれます。10番ロングはストレートの打ち下ろしとなっていて、飛距離自慢にはたまらない魅力でしょう。大手予約サイトからの予約も可能で、曜日指定の特典を利用すれば昼食付セルフ乗用カートが6,500円ほど。土日祝日でも10,000円少々でラウンドできます。50年以上に渡るゴルフの技術と変化を共に歩んだ名門コースは一味違います。

中国地方随一の難関コースゴルフ場「山口レインボーヒルズ豊田湖ゴルフクラブ」

山口レインボーヒルズ豊田湖ゴルフクラブは、1971年(昭和46年)に開場した豊田湖に面する景色壮麗の名門ゴルフ場です。サーキットの設計でも名を馳せる田中肇氏が監修し、2012年のコースレート査定においては山口県ナンバー1の称号を得ています。注目を集めるきっかけとなったのは、1989年に第53回関西プロゴルフトーナメントの競技場所として選ばれたことでしょう。優勝者は、トータル12アンダーで回った松井一プロです。丘陵地ながらOUTは比較的フラット且つ雄大なホールが多く、キーとなるのは3番、4番の距離のあるミドルです。特に4番は200ヤード付近からグリーンまで池がセパレートしているので難易度最高です。INは多少の起伏に打ち下ろしや池が配置され、アメリカンスタイルの15番打ち下ろしのムードは抜群です。平日は昼食付セルフ乗用カートの2サム保証割増なしで6,000円少々。土日祝日は10,000円少々。土曜日は10,000円以下となる割安さです。宿泊パックも15,000円から取りそろえていますので、ゆっくりとしたゴルフライフを楽しむ事ができるでしょう。トリッキーと評判の名門コースにチャレンジしてください。

数々のプロゴルファー共演の舞台となったゴルフ場「宇部 72 カントリークラブ 万年池西コース」

宇部 72 カントリークラブ万年池西コースは、1975年(昭和50年)に開場したアットホーム的イメージの名門ゴルフ場です。元々牧場だった土地を宇部興産元会長の中安閑一氏が設計、造成し、宇部72カントリークラブの中で、一番コースレートの優しいコースとなります。ゆったりとデザインされたフェアウェイにバンカーを囲むよう配置されたグリーン、落としどころに上手く効いている池など果敢に攻めていけるレイアウトです。ほぼ直角にドッグレッグし一打目の落とし場所が池とバンカーに挟まれる4番。400ヤード越えのパー4や180ヤード越えのパー3など距離の克服も楽しめます。1995年には、28回目の日本女子オープンが開催され、塩谷育代プロが優勝を飾っています。また、1993年のペプシ宇部興産では丸山茂樹プロが優勝するなど、名立たる選手がこのフェアウェイで技を競い合い、栄冠を手にしています。ラウンド費用は日にち限定でセルフ乗用カート昼食付が8,500円ほど、土日祝日は食事代別で13,000円ほどにて大手予約サイトからも予約ができます。卓越した名門チャンピオンコースで輝かしいスコアを達成してください。

日本を代表する設計家の想いを形にしたゴルフ場「中須ゴルフ倶楽部」

中須ゴルフ倶楽部は、1975年(昭和50年)に開場したゆとりある広さの名門ゴルフ場です。ゴルフの神様と呼ばれ、日本女子プロ界の巨匠樋口久子プロを育てた中村寅吉氏の設計した飛距離勝負の本格的チャンピオンコースに仕上げられ、オープン2年後には男子レギュラーツアーの関西プロゴルフ選手権が開催、後に日本ゴルフツアー機構初代会長に就任した島田幸作プロが通算8アンダーで優勝しています。松林でセパレートされているフェアウェイは静かなうねりを見せながらグリーンへと流れ込んでいて、少しのミスショットが大きくスコアに影響する難度の高いレイアウトです。5番のミドルは220ヤード付近から左にドッグレッグし、三つの池と谷がプレイヤーの心理を揺るがす最難関のホールです。平日利用可能なら昼食に最新GPSナビの付いたカートでのセルフプレーが約8,000円。土日祝日でも12,000円弱とリーズナブルな料金に思わず顔がほころんでしまします。ライトアップされた鍾乳石が独特の世界観を演出している名物の大岩風呂を楽しみに、18の英知の結晶にティーショットを放ち、挑戦してください。

自然と人の知恵が織り成す美術のゴルフ場「宇部 72 カントリークラブ 江畑池コース」

宇部 72 カントリークラブ江畑池コースは、2000年(平成12年)に開場した宇部72カントリークラブの中で最も新しい名門ゴルフ場です。光と影の魔術師と言われ世界を舞台に活躍するロバート・ボン・ヘギー氏が手掛けたコースは、各ホールの目標となるグリーンを最大限生かすレイアウトを構成しています。個性的な地形や湿地帯、水辺の景観を生かした視覚的美巧は見事であり、感動を覚えるゴルファーも多いでしょう。戦略性も高く、ふんだんに取り入れたウォーターハザードとフェアウェイのアンジュレーションがプレイヤーの挑戦意欲を騒がせます。18番パー4は、400ヤードを超し、バンカーに囲まれたグリーンを狙うセカンドショットが池越えとなる精神面の強さも必要な難関ホールです。2年連続でペプシ宇部興産トーナメントが開かれ、2000年は深堀圭一郎プロ、2001年にはディーン・ウィルソンプロが優勝。本格的なチャンピオンコースとして世に知れ渡ります。平日は乗用セルフカートに昼食付で7,000円ほど。土日祝日も11,000円ほどで挑戦できます。力量にあった攻略ルートがありビギナーから上級者まで楽しめる名門コースです。

まとめ

10ヶ所それぞれの歴史を紹介してきましたが、皆さんはどのゴルフ場に興味をもたれたでしょうか。名門と呼ばれる理由は様々ありますが、どれもゴルフを愛する人々の想いが強く関わって、素晴らしい開場を迎えています。プロツアーの開催も多くの愛好家を生み出すだけではなく、開催されたコースを育て上げています。ドレスコードなど、いつもの気軽さが難しいところもありますが、日本のトップ選手が真剣勝負を繰り広げたフェアウェイに立ち、同じ芝のうねりを感じながら同じ方向にショットを放つ快さは別格の事と思います。重ねた年月から伝わってくる大きさと素晴らしさがゴルフライフの更なる魅力を教えてくれるでしょう。極上の時間を過ごす事のできる緑のフィールドがいつでも扉を開けています。名門という格式の中で繰り広げる競技の面白さを味わうための参考にして下さい。

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